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2004.07.17 (土)

「 外交は政権の道具ではない 首相は名誉欲を捨てよ 国を売りたもうことなかれ 」

『週刊ダイヤモンド』    2004年7月17日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 551

かつての小泉純一郎首相のイメージは、淡々とした人物のそれだった。自分の利益にそれほどこだわることなく、この国に必要な改革にこそこだわり、誰が抵抗しようが反対しようが改革を進める、“よき変人宰相”に見えた。

首相就任から4年目。権力の座はこれほどまでに人間を変えてしまうものか。現在の首相には自分の利益と名誉欲しかないのかと思う。

たとえば北朝鮮政策である。曽我ひとみさんが7月9日にインドネシアのジャカルタで家族と再会することになった。本当に喜ばしい。私はこの20年間、さまざまな角度から北朝鮮問題を報道してきた。拉致問題には特にこだわってきた。だからこそ、曽我さんの件はとりわけうれしく思う。が、首相の手法には不快感を禁じえない。七月一一日の参議院選挙への効果を狙っているのが見え見えだからだ。

つい数日前の7月2日、各紙は「曽我さん一家の再会は、二女のブリンダさんの誕生日である7月23日までに実現か」と報じた。一方、細田博之官房長官は、安全性の確保や医療設備、一家が静かに話せる環境などの整備を考えると、たとえば翌週などの日程では無理とコメントした。月内ならともかく、一週間後に、つまり7月11日の選挙前に再会させるというような性急な日程では無理だと述べたのだ。

一方、小泉首相は7月1日夜に「できるだけ早いほうがいい。23日を待つ必要はない」と発言している。その間に各紙は、自民党が劣勢との世論調査結果を次々に発表した。内閣支持率は急落傾向と報じられた。

首相は焦っているに違いない。曽我さん一家の件に関しては、フタを開けてみれば小泉首相の意思が通されていた。官房長官が無理と言った「一週間先の再会」が実現することになったのだ。曽我さん一家の再会が、なぜ、急に選挙2日前の9日に実現することになったのか。理由については「毎日新聞」が北朝鮮の白南淳(ペク・ナムスン)外相の言葉を引用して報じている。7月2日夕刊一面の記事には、白外相がインドネシアの外相に「日本側は今月11日までにバリ島で再会させたがっている。われわれは日本の希望を受け入れる」と伝えていたというのだ。

「11日までに」とは、なんとあからさまなことか。北朝鮮に足元を見透かされた小泉首相は、今、自分の手で日朝国交正常化を実現したいと述べている。自分の任期中にということは、あと2年余のあいだにということだ。だが、これこそ、してはならないことだ。

外交に期限を設け功を焦れば、相手につけ込まれる。小泉政権は拉致問題を政権の利益に結び付けようとするあまり、すでに北朝鮮に大きな借りをつくった。北朝鮮の外相はインドネシアの外相に「小泉政権は7月11日の選挙前に一家再会をさせたがっている」と語った。国家として恥ずべきことを言われてしまったのだ。こんな状況だからこそ、横田めぐみさんら10人の安否の確認もできていないにもかかわらず、日朝国交正常化を“急がされる”のだ。

国交正常化に伴う巨額の日本資金が、北朝鮮の目当てである。小泉首相にとっては、正常化は歴史に名を残すことかもしれない。だが、自分の名誉欲を先行させ、相手につけ込まれるような外交では、決してよい成果は生まれない。

かつて、ニクソン政権下で米国は劇的な中国訪問を成し遂げた。共和党のニクソン大統領が訪中したのは1972年。だが、米中国交正常化は79年、カーター民主党政権のときだ。ニクソンの個人的名誉を離れ、政党を超えて国益を守り、国益に基づいて外交を推進した一例だ。首相よ、この例から学べ。自らの欲のために、国を売ることは許されないことを認識せよ。

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